publications.asahi.com 『街道をゆく』は、1971年から1996年まで「週刊朝日」に連載された、書籍にして全43巻の大紀行です。司馬さんが辿った街道は、国内に留まらず、欧州やモンゴルなど海外へと及んでいます。
【旅の時期】 1980年10月初旬
一乗谷朝倉氏遺跡
司馬さんの越前の旅は宝慶寺から始まる。宝慶寺は、道元を慕って中国から来た僧、寂円が開いた寺である。ひたすら座禅を組み、道元の禅風を守り通した寂円のことを考えつつ、山深い地にある宝慶寺を訪れる。若い雲水が宝物館に案内してくれ、司馬さんは、そこに有名な道元と寂円の画像があるのを見て驚く。勝山市の老舗旅館に泊まった翌朝、平泉寺を訪れる。中世、「法師大名」といわれた平泉寺の興亡を思い浮かべつつ境内を歩くと、以前来たときと同じ老人がいて、浄域の由来を語っていた。さらに一乗谷の朝倉家の遺跡に赴いた司馬さんは、信長に焼き滅ぼされた朝倉義景の武将としての一面に思いをいたす。丸岡城や三国港を経て、旅の最後に訪れたのは、越前陶芸村。勅使河原宏氏が工房を開いていて、いまだに古越前の工法で作陶している藤田重良右衛門氏を紹介され、藤田氏の「輪積み」の工法を見て、舞のようだと思う。