新型コロナウイルスの「第5波」で、大阪府の新規感染者数の累計が今春の「第4波」の1・8倍になる一方、死亡率は0・2%にとどまった。全国平均の0・3%、東京都の0・31%よりも低かった。高齢者を中心にワクチン接種が進んだことに加え、早期治療の徹底などが奏功したとみられる。大阪府の公表データを基に分析した。
インド由来の変異ウイルス「デルタ株」が猛威をふるった影響が大きかった。感染力は第4波で主流だったアルファ株と比べ1・5倍、それ以前の従来株の2倍とされ、夏休みで人の動きが活発になったことなども増加につながったとみられる。
爆発的な感染拡大が起きた一方で、死者や重症者は第4波よりも抑えられ、ワクチン接種の効果が裏付けられた。
府によると、重症化率は第4波の3・2%から1・0%に低下。死者は238人(9月24日時点)で、第4波の1537人から大きく減少し、死亡率も第4波の2・8%から0・2%になった。重症化しやすい60代以上の感染者でみても、死亡率が未接種者の3・5%に対し、2回目接種後14日以降の人では1・2%だった。
第5波の新規感染者9万5218人(同)を年代別でみると、60代以上の割合は7・3%で、第4波(23・4%)の3分の1に低下し、未接種者が多い30代以下が66・2%を占めた。ワクチン効果は、クラスター(感染集団)に占める医療機関や高齢者施設の割合(感染者数ベース)が第4波の67%から18%に減少したことにも表れた。
ワクチン接種に加え、府が医療崩壊の危機に直面した第4波を教訓に病床や宿泊療養施設を拡充し、患者が入退院する「回転率」を上げて早期治療を徹底したことも大きかった。
それは、死亡率が第4波では東京都の0・97%を大きく超えていたのに対し、第5波では反対に下回るまで改善したことにも表れている。
医療の状況が改善したことは、データからも読み取れる。平均入院日数では軽症・中等症病床が9・5日、重症病床が約9日で、ともに第4波より3日程度短縮した。搬送先が決まるまで一時待機する「入院患者待機ステーション」の平均滞在時間は、第4波の5分の1にあたる1時間59分になった。
緊急事態宣言は9月末を期限に全面解除されたが、今冬の「第6波」の到来が懸念される。府専門家会議で座長を務める朝野(ともの)和典・大阪健康安全基盤研究所理事長は「感染者に占める子どもの割合が高まることが想定されるため、親や教員など周囲の大人がワクチンを接種し、子どもが感染しにくい環境を作ることが大切だ。子どもの重症化はまれだが、持病がある場合は接種することが望ましい」と話している。