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つれづれなるままに日暮らし

漢字の伝来

Google (*) - 岩波書店

日本の文字としてどう生れ変ったか

 今、日本に存在している漢字で最も古いものが何かご存知でしょうか? それは江戸時代に、福岡県の志賀島から発見された「漢委奴国王 (「かんのなのわのこくおういん」)」という漢字五文字が彫られたかの有名な金印です。奴国の王が中国・後漢の光武帝から与えられたと伝えられているものです。

 それ以後、この列島に住む古代の人々は、中国からやってきた漢字をどのように受け入れていったのでしょうか?

 この本は、日頃なにげなく漢字を使っているわたしたちにとって、そのルーツを訪ねることになりますが、この旅のゴールには、「平仮名」や「片仮名」が待っています。さあ、日本の漢字の歴史をたどる旅に出かけてみませんか。

著者からのメッセージ
  今から2000年ほど前のことです。文字をもたなかった私たちの祖先は、中国生まれの漢字に遭遇しました。そして彼らは、この漢字を自分たちの言語(ことば)を書きあらわす文字として採用しました。文化史的に一大事件ともいうべきこの外来文字の導入が、その後、長く苦しい試練を古代日本の人びとに強いることになるなどとは、彼らは夢にも想わなかったでしょう。そもそも漢字という文字は、日本語とは構造がまったく異なる中国語を表記するために生まれたものです。そのような文字で日本語を書き写すことには、初めから無理がありました。しかし彼らは、めげずに試行錯誤を重ね、つぎつぎと立ちはだかる障壁をのりこえていきました。本書は、漢字がたどった“日本語化”への道程を追跡し、私たちの祖先がどのようにして漢字・漢文を自家薬籠中のものとし、なぜそれができたのかを日本語・中国語の言語構造の違いや古代朝鮮の文化的影響、東アジア諸国の漢字との取りくみ方なども視野に入れ、エピソードを織りこみながら探ったものです。

大島正二(おおしま・しょうじ)
1933年東京に生まれる
1963年東京大学大学院修士課程修了
専攻―言語学、中国語学
現在―二松学舎大学客員教授北海道大学名誉教授
著書―

唐代字音の研究』(研究篇)(資料篇)(汲古書院) 1987/01 ¥35,000

〈辞書〉の発明』(三省堂) 1997/12 ¥871

中国言語学史(増訂版)』(汲古書院) 1981/2 ¥4,000

漢字と中国人』(岩波書店

漢字に挑んだ人びとのドラマ

 日本人にとって漢字は日々読み書きをしている、切っても切れない関係にあるものですが、本家本元の中国人にとって漢字は一体どういう存在なのでしょうか。この本は、漢字の起源から現在まで、中国人が漢字とどのように関わってきたかを懇切丁寧に述べて、そのような問いに答えようとするものです。

 世界広しといえども、形・音・意味の三要素をもつ文字は現在、漢字以外にはないそうですが、そのようにユニークな漢字が古代からずっと使われ続けてきたことは考えてみればかなり不思議なことに思えます。中国人が漢字を使い続けてきた理由は何でしょうか。そして、そこにはどのようなドラマがあったのでしょうか。この本を読んでいくと、漢字を使いこなすのに様々な工夫が重ねられて、その用途が拡げられていったことがよくわかります。古語を現代語訳する、漢字を形で分類する、「反切」という方法によって表意文字である漢字を表音文字としても使う、漢字の簡略化・ローマ字化を試みるなど、その工夫の跡がそれを担った人々のことと共に紹介されますが、その知恵には感心させられます。

 そして、その成果が字書義書韻書韻図などとして結実していくわけですが、その過程が豊富なエピソードを交え、日本の辞書に与えた影響などにも言及しながら描きだされます。私たちはつね日頃から漢和辞典などを通してその成果を享受しているわけですから、その開拓者たる人びとの軌跡を振り返ってみるのも興味ぶかいことではないでしょうか。漢字や中国の文化史に興味のある方におすすめしたい一冊です。

大島正二(おおしま・しょうじ)
 1933年東京に生まれる。1963年東京大学大学院修士課程修了。専攻は言語学・中国語学。現在、二松学舎大学大学院教授、北海道大学名誉教授。著書に『唐代字音の研究』(研究篇)(資料篇)(汲古書院)、『〈辞書〉の発明』(三省堂)、『中国言語学史(増訂版)』(汲古書院)などがある。
 
目次

はじめに

漢字は誰が造ったか

古語を現代語訳する ― 義書(ぎしょ)

形で分類する ― 字書 (じしょ)

表音文字として使う―韻書韻図

  • 韻図 (いんず)、等韻図(とういんず)

簡略化・ローマ字化を試みる

注/中国文化史略年表/あとがき/索引