植物の科学(’21)
地球上の生命のほとんどは、植物の営みに支えられている。呼吸のための酸素、エネルギー源となる炭水化物などは、植物が行なう化学反応によって作られているからである。生物の細胞内で絶え間なく起こっている化学反応を代謝と呼び、その何千種類もの化学反応を触媒するのは何千種類もの酵素タンパク質である。したがって、植物の代謝を個々の化学反応のレベルで知ることは、植物の営みをミクロの視点で理解することにほかならない。この章では、まず植物の代謝について概観したのち、植物の最大の特徴ともいえる光合成の仕組みと、光合成によって作られる糖がタンパク質や脂質などに変わっていく仕組みについて扱う。あまりなじみのない化合物名がたくさん登場するが、頑張ってついてきて欲しい。
【キーワード】
酵素反応、異化代謝、同化代謝、代謝産物、炭素固定、ATP、還元力、電子伝達系、カルビン・ベンソン回路、解糖系、クエン酸回路、窒素、硫黄、アミノ酸、脂質
担当講師:平井 優美(理化学研究所チームリーダー)