www3.nhk.or.jp 2020年4月11日 22時33分
台湾当局は、去年12月にWHOに送った文書を公表し、中国でヒトからヒトへの感染が疑われる事案が起きていると警告していたと強調しました。
去年12月末 「中国の武漢で非定型の肺炎が少なくとも7例出ていると報道されている。現地当局はSARSとはみられないとしているが、患者は隔離治療を受けている」
台湾の陳時中衛生福利部長は会見で「隔離治療がどのような状況で必要となるかは公共衛生の専門家や医師であれば誰でもわかる。これを警告と呼ばず、何を警告と呼ぶのか」と述べ、文書はヒトからヒトへの感染が疑われる事案が起きていると警告していたと強調しました。
www.google.com 1月23日
◇「記憶」残す女性作家の日記
新型コロナウイルスでの死者が2570人以上に上った武漢の「記憶」を残そうと、記録し続けたのが武漢在住の女性作家、方方さん(64)だ。湖北省作家協会主席も務めたこともある有名作家の方さんは、政府が武漢に対して異例の封鎖措置を断行した2日後の1月25日から毎日、封鎖下の武漢の庶民の日々の暮らしや政府に対する憤りなどをつづり、午前0時前後にSNSにアップした。中国だけでなく、全世界の中国人らがその文章に共感し、読者は億単位に上ったとされる。
方さんは日記で、感染情報を隠蔽(いんぺい)した政府に対する不信感をにじませ続けた。武漢市政府は1月上・中旬、市内の病院で多数の感染者が発生したことを把握していながら、重要会議期間中に新たな感染者を公表しなかった。市民らは、省・市政府幹部が会議の「円満成功」のため感染情報を意図的に隠したと信じている。「人から人への感染」の事実も否定し続けた。最初の感染報告から40日以上も経過し、習近平国家主席が感染まん延阻止や情報開示を指示して一転、各地政府から競って感染者情報が出されるようになった。
◇「社会の疾病が露呈した」
日記で役人の隠蔽体質、さらに上(習主席)しか見ない官僚体質を厳しく非難した。
「ひとしきりの疫病で、無数の人間模様が暴露されました。そして中国各地の役人の基本的レベルもあらわになりました。さらにわれわれの社会の疾病も露呈しました。これは、今回のコロナウイルスよりもたちが悪く、いつまでも治らない疾病です」(1月30日)。
「『人から人への感染はない』。この言葉が武漢を血と涙、無限の苦しみの街に変えてしまったのです」(2月9日)。
「一つの国家が文明的かどうかを計る尺度は、高層ビルが多いとか、車が速いとか、強大な武器や軍隊を持つとか、発達した科学技術、優れた芸術、派手な会議や光り輝く花火や、全世界を豪遊し、モノを買いあさる観光客が多いかどうかではない。尺度はたった一つ。それは、その国の弱者に対する態度なのです」(2月24日)。
「集団の沈黙こそ最も恐ろしいこと」(2月29日)。
「私とわれわれは知りたい。こんな大きな問題が、なぜ隠蔽されなければならなかったのか」(3月8日)。
SNSにアップされた日記は、検閲に遭って削除され、共産党・政府寄りの人から方方さんは脅しを受けた。それでも筆を置くことはなかった。それは武漢の人々の「記憶」を引き継ぎ、「記録」として残すためであった。
◇「忘れれば恥辱背負うことに」
「反省と責任追及の両者は一体なのです。厳正な責任追及がなければ、厳粛な反省は不可能です。今、人々の記憶はまだ残っており、事細かな時間感覚もある。みな脳裏の中に深刻に刻まれています。まさに始めなければならない時です。政府に対しては調査チームを迅速に立ち上げ、感染がなぜ今日の災難に拡大してしまったのか徹底した調査を改めて望みたい。同時に次のことを提案します。記述能力のある武漢人として、私は1月以来、見たこと、聞いたこと、感じたことを記録していますが、さらに民間の書き手たちがグループをつくり、死者の遺族を探し出し、亡くなるまでの経緯を書くことを支援するよう希望します。われわれあらゆる武漢人は、今回の災難が残した集団の記憶を書き留めるべきです」(3月9日)。
湖北省政府は3月24日、4月8日をもって武漢の封鎖措置を解除すると発表したが、方さんは3月24日の日記を最終回とした。60編まで積み重なった日記の最終回でこう記した。
「2カ月間以上も家に閉じ込められた武漢の市民として、また武漢の悲惨な日々を体験し目撃した証人として、われわれには無念のまま亡くなった人の遺恨を晴らす責任と義務があるのです。誰が誤ったのか、誰に責任があるのか。もしわれわれが責任追及をあきらめれば、もしわれわれが絶望を忘れる日があるとすれば、私はこう言いたい。『武漢人よ、あなたたちの背負うのは災難ではなく、恥辱なのですよ』と」(3月24日)。
◇習主席が危機を救う宣伝
一方、中国共産党は、武漢封鎖からわずか1カ月足らずで感染の急拡大期を抑え込んだ。AI(人工知能)やビッグデータなど得意の最先端技術と伝統的な社区(町内会)組織を動員した監視・追跡システムや、有無を言わせぬ徹底した隔離政策を大展開した結果とも言えた。これとは対照的にイタリアやスペインをはじめ欧州、米国などでは感染拡大の勢いが止まらず、「第2次世界大戦以来の危機」(グテレス国連事務総長)と言われる。基本的に抑え込んだと言う中国政府は一転して感染が深刻な各国への支援に本腰を入れ始め、中国の国際的影響力が高まっていると内外に印象付けている。トップダウンで全国民を従わせることが可能な共産党体制の優位性を誇示し、習近平国家主席が危機を救っているという共産党主導の宣伝が際立っている。