生物界の基礎生産を行ない、酸素の供給源ともなっている植物に関して、その多様性、生理、発生、生化学、生殖、成長、他の生物との相互作用について説明する。さらに、合わせて医薬、食料や環境修復、園芸など暮らしとの関わりに関する応用植物科学の側面も講義する。『動物の科学』とペアになる講義である。
授業の目標
21世紀に生きるわれわれは、いわゆる地球温暖化問題や生物多様性の喪失、大幅な人口増加とそれに伴う食糧不足や環境悪化など、いずれも即効性のある答えが簡単には見いだせない問題に直面している。こうした問題に取り組むための方策を模索するうえで、われわれに科学的な基盤を与えてくれる自然科学の重要な分野が、植物の成り立ちやはたらき、環境やほかの生物との関わりを研究する「植物科学」である。植物に対して広い関心と理解、そして愛着を育むことが本講義の大きな目標である。
第5回 成長・発生(3)〜根〜
根は土壌から水分や養分を吸収して、植物体の生育を支えている。根の多様性やその構造とはたらきについて紹介する。また、根の成長発生に関して、側根の形成や重力に対する屈性反応などを取り上げ、それらの仕組みと関連する植物ホルモンについて紹介する。
【キーワード】
根端分裂組織、放射パターン、側根、重力屈性、オーキシン (auxin)
担当講師:深城 英弘(神戸大学大学院教授)
植物の生の営みの特色の1つは、光のエネルギーを化学エネルギーに変換する光合成過程である。植物が光エネルギーを受け取り、化学エネルギーに変換するしくみとその多様性、二酸化炭素や窒素などの無機養分が有機物に同化される過程、さらに、光合成産物が一次代謝に利用されていく関係を解説する。
【キーワード】
酵素反応、異化代謝、同化代謝、代謝産物、炭素固定、ATP、電子伝達系、カルビン・ベンソン回路、解糖系、クエン酸回路
第4回 成長・発生(2)
〜休眠・発芽と伸長〜 完成した胚を含む種子は、水分を失い乾燥種子として休眠状態に入るが、水、酸素、光といった適切な環境刺激のもとで発芽が可能になる。発芽した芽生えは光環境に応じた成長をおこなう。種子の休眠と発芽の仕組み、それに関わる植物ホルモン、種子や芽生えが光を感じて成長を調節する仕組みなどについて紹介する。
【キーワード】
種子休眠、発芽、植物ホルモン、光受容体、生物時計