米中関係悪化、オピオイド危機にも波及
中国政府は、フェンタニルの製造に使用する中国製化学物質の流通規制への協力を停止
米国で薬物中毒死が急増
米疾病対策センター(CDC)は7月14日、「昨年の米国の薬物過剰摂取による死者数(暫定値)が過去最多の9万3331人に達した」
2019年の7万2151人から29%の増加であり、年間の伸び率も過去最高だった。
米国の新型コロナウイルスによる死者数は約37万5000人
昨年の薬物中毒死のうちオピオイド(医療用の麻薬性鎮痛薬)が原因となるケースが全体の約75%を占め、2019年の5万963人から6万9710人に増加したという。
フェンタニル(合成オピオイド)はモルヒネやヘロインの50倍以上の強さがあり、純度100パーセントなら2ミリグラムで死に至る
中国が「アヘン戦争」仕掛ける?
パンデミック対策で国境管理が格段に厳しくなっているのにもかかわらず、メキシコの犯罪組織のせいでフェンタニルなどの米国への流入が加速しているが、「もともとの製造国は中国だ」と米国政府は考えている。
中国は米国に次ぐ世界第2位の製薬産業を擁している。なかでも低価格のジェネリック医薬品や薬の原材料の生産能力が高い。先進国に比べて規制も緩い。米麻薬取締局によれば、中国の業者がフェンタニルなどを大量生産し、メキシコやカナダなどを経由して米国に大量に送り込んでいるという。フェンタニル1キログラムの仕入れ価格が中国国内では約3000~5000ドルだが、米国で売りさばけば150万ドル以上の稼ぎになったという(2019年末時点)。
暗号化されたメッセージアプリやビットコインなどの仮想通貨の普及も、こうした取引の温床になっている。中国からのフェンタニルの流入は、オバマ政権時代から問題視されていたが、中国との間の外交課題として初めて取り上げたのはトランプ前大統領である。