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株価急落 2007年でなく1998年型か

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2018 年 2 月 13 日 11:59 JST. ――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター. ***. 1998年か2007年か。 先週の株価下落を受けて前例探しが始まった。今回の下落は、恐ろしかったが経済への長期的影響はほとんどなかった87年や98年の下落に似ているのか。それとも、氷山の一角だった一部ヘッジファンドサブプライムローン金融機関の破綻が経済全体を巻き込んだ07年の危機に近いのか。 今のところ、似ているのは87年や98年のようだ。いずれのケースでも一部の市場参加者が打撃を ...

相場が急落した翌日のニューヨーク証券取引所(1998年6月) PHOTO: ADAM NADEL/ASSOCIATED PRESS
By Greg Ip
2018 年 2 月 13 日 11:59 JST

――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

***

 1998年か2007年か。

 先週の株価下落を受けて前例探しが始まった。今回の下落は、恐ろしかったが経済への長期的影響はほとんどなかった87年や98年の下落に似ているのか。それとも、氷山の一角だった一部ヘッジファンドサブプライムローン金融機関の破綻が経済全体を巻き込んだ07年の危機に近いのか。

 今のところ、似ているのは87年や98年のようだ。いずれのケースでも一部の市場参加者が打撃を受けたが、07年と違って実体経済にはほとんど影響しなかった。

 87年は、現在と同様に弱いドルや債券利回り上昇やインフレが懸念されるなか、新たな連邦準備制度理事会FRB)議長(当時はアラン・グリーンスパン氏)が自らの資質を証明しようと必死だった。レバレッジを効かせた企業買収が同年の強気相場の大きな材料だったが、議会はこれを抑える税制改革を検討していた。しかし、これらは単なる背景にすぎなかった。87年10月19日に株価暴落をもたらしたのは「ポートフォリオ・インシュアランス」、つまり相場下落時に大口投資家に売りを強いるのも同然の戦略だった。

 98年の場合、大手ヘッジファンドのロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)が多額の損失を被ったきっかけは、ロシアのデフォルト(債務不履行)だった。LTCMがポジションを解消すると、ダウ工業株30種平均は19%下落し、他の相場も変調をきたした。だが力強い米国の景気拡大は続いた。

 対照的に、07年に起きたベア・スターンズ傘下のヘッジファンドの破綻、 HSBCホールディングス などでのサブプライムローンの多額損失は、問題の原因ではなく症状だった。問題だったのは崩壊間近だった住宅価格を裏付けにした数兆ドルのいいかげんな住宅ローンだ。その多くは銀行が不透明な商品の形で保有していた。

 今回の売りを引き起こしたのは、中央銀行が一連のインフレに利上げ加速で対応するとの懸念だった。しかし、それは火花でしかなかった。燃料は、市場が複雑な取引に織り込んだ、相場の低ボラティリティー長期化という観測だった。

 経済学者の故ハイマン・ミンスキー氏は、安定は不安定化だと言った。長期的な平静はリスクテークを促し、それがいずれ崩壊をもたらす。過去10年の株と債券は異常に扱いやすかった。一因は、中銀がそれぞれの経済的脅威(そして株価下落)に意地でも追加的な金融刺激で対処しようとしたことだ。同じ要因から、株と債券価格は逆方向に動き、逆相関を示したため、自然と互いへのヘッジとなった。

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 投資家はこの低ボラティリティーと逆相関を利用する戦略を編み出した。一例が、シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)が低水準にとどまると見込んだ賭けだ。こうした賭けは、広がるにつれてボラティリティーをさらに押し下げた。ボラティリティー低下に合わせ、借入金を使って株や債券のポジションを拡大する「リスクパリティ」取引も行われた。 エバーコア ISIによると、こうした戦略に対する投資は計2兆ドルを上回った可能性がある。

 だがボラティリティーが高まり、株と債券の価格が順相関になると、そうした戦略は逆作用した。ポジションが手じまいされ、借り入れが減るなか、ボラティリティーはさらに上昇した。

 87年や98年と同様、こうした動きはスパイラル型だ。ポジション解消がもたらす相場水準は、他の参加者に損失とポジション解消を強いる。そうした売りはいずれ燃え尽きるが、その時期は予想がつかない。ノムラ・セキュリティーズのストラテジスト、チャーリー・マケリゴット氏は先週、過去18カ月の低ボラティリティーが「多大なリスク・エクスポージャー蓄積を可能にした」と記している。ボラティリティーが高止まりすれば、ボラティリティー関連の投資規則に基づくファンドの売りの波を引き起こす可能性があるという。

 87年と98年には、この種の強制的な売りは経済にとって一時的な回り道にすぎなかった。今回も同様かもしれない。

 あるファンドマネジャーは「これがファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)と無関係だというのが単なる思い込みでなければいいと願っている」と述べながらも、「だがそうだと思う」と慎重な姿勢を見せた。

 インフレへの懸念は行き過ぎだとしても、複数の事象を受けて債券市場の空気は明らかに変わっている。債券価格は非常に高い。債券投資家は現在、失業、原油価格の上昇、ドル下落、インフレ高進を招きかねない保護主義を懸念している。これと1兆ドル突破が予想される米財政赤字や各中銀の債券保有縮小が相まって、債券価格を押し下げ、利回りを押し上げるだろう。

 金融政策も分からない。あるヘッジファンドのマネジャーは「ジャネット・イエレン前FRB議長が打とうとしている手はよく分かった」が、現FRB議長の「ジェローム・パウエル氏が打とうとしている手は分からない」と述べた。

 パウエル議長は5日の就任以来、相場の混乱に言及していないが、同僚らはそれに取り合わず、むしろ歓迎している。ダラス地区連銀のロバート・カプラン総裁は「もう少し市場のボラティリティーが高いのは健全なことかもしれない」と述べた。事実かもしれないが、中銀当局者の言葉となると自己満足、さらには加担しているように聞こえるため、投資家の後退傾向を増幅させかねない。

 投資家がインフレと金利上昇のリスクを見直すなか、債券利回りとボラティリティーがじりじり上昇する可能性がある。そうなれば、企業の業績が良好でも株価は下がるだろう。それに、市場の動きは経済を反映するだけではない。経済を動かすこともある。1987、98、2007-08年の混乱は市場参加者に損失を負わせ、FRBの介入が必要になった。危機後の改革で金融システムは強化されたが、ボラティリティーで弱い部分が露呈することもあり得る。2000年にITバブルがはじけた時には、裕福な株式投資家や起債・株式発行をできなくなったIT企業が支出を控えた。

 あるマネジャーは「この強制的なレバレッジ解消のために金融環境が引き締まり、それが自動車ローンやサブプライムや住宅に波及したら何が起きるか」と警鐘を鳴らした。「それは景気拡大後期の典型だが、毎回違いがある。私が心配なのはそこだ。これが速く燃え尽きる必要がある」

シカゴ*